自己免疫疾患による脱毛メカニズム

自己免疫疾患による脱毛メカニズム

私たちの体を細菌やウイルスなどの外敵から守ってくれる免疫システム。しかし、この免疫システムが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気が自己免疫疾患です。そして、この自己免疫疾患の中には、髪の毛を作り出す毛包を攻撃対象としてしまい、結果として抜け毛や脱毛を引き起こすものがあります。代表的なものが円形脱毛症です。円形脱毛症は、リンパ球などの免疫細胞が毛包を異物と誤認して攻撃することで発症すると考えられています。攻撃された毛包は炎症を起こし、正常な毛髪の成長が妨げられ、突然円形や楕円形に毛が抜け落ちてしまいます。症状は頭部だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身に及ぶこともあります。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病も、抜け毛を引き起こす代表的な自己免疫疾患です。SLEは全身の様々な臓器に炎症が起こる病気ですが、皮膚症状の一つとして脱毛が見られることがあります。これは、毛包周囲の炎症や血流障害などが原因と考えられています。皮膚筋炎や強皮症といった他の膠原病でも、皮膚の変化に伴って脱毛が生じることがあります。これらの自己免疫疾患による抜け毛は、単に髪が抜けるというだけでなく、疾患そのものの活動性と関連している場合が多いのが特徴です。つまり、元の病気の勢いが強い時期には抜け毛も悪化し、治療によって病気が落ち着くと抜け毛も改善する傾向にあります。したがって、自己免疫疾患が疑われるような抜け毛の場合は、皮膚科やリウマチ科、膠原病内科などの専門医を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが最も重要です。早期発見と早期治療が、脱毛の進行を食い止め、回復を促す鍵となります。