AGA(男性型脱毛症)の治療を受けている、あるいはこれから受けようと考えている方にとって、喫煙習慣が治療効果にどのような影響を与えるのかは非常に気になるところでしょう。結論から言えば、タバコはAGA治療の効果を妨げる可能性が高いと考えられています。そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。AGA治療の代表的な方法として、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬、そしてミノキシジル外用薬があります。内服薬は、AGAの原因となる男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制することで、薄毛の進行を遅らせる効果があります。一方、ミノキシジル外用薬は、頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促す効果が期待できます。しかし、喫煙はこれらの治療薬の効果を減弱させてしまう可能性があります。まず、タバコに含まれるニコチンによる血管収縮作用です。ミノキシジルは血管を拡張して血流を改善しようとするのに対し、ニコチンは血管を収縮させてしまいます。つまり、治療薬の効果を打ち消すような働きをしてしまうのです。血流が悪化すれば、せっかくの有効成分も毛母細胞に届きにくくなり、期待される効果が得られにくくなります。また、タバコに含まれる多くの有害物質は、体内で炎症反応を引き起こしたり、酸化ストレスを高めたりすることが知られています。これらの状態は、頭皮環境を悪化させ、毛母細胞の正常な働きを妨げます。健康な頭皮環境は、AGA治療薬が効果を発揮するための土台となるため、喫煙によってこの土台が損なわれてしまうと、治療効果も低下しやすくなります。さらに、喫煙は薬物の代謝に影響を与える可能性も指摘されています。肝臓の薬物代謝酵素の働きが変化することで、AGA治療薬の体内での濃度や効果持続時間に影響が出ることも考えられます。このように、喫煙は様々な側面からAGA治療薬の効果を妨げる要因となり得ます。せっかく費用と時間をかけてAGA治療を行うのであれば、その効果を最大限に引き出すためにも、禁煙に取り組むことが強く推奨されます。
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薄毛治療保険適用外でも医療費控除は?
薄毛治療、特にAGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)の治療は、原則として自由診療となり、健康保険が適用されません。そのため、治療費が高額になることもあり、「せめて医療費控除の対象になれば…」と考える方もいるでしょう。しかし、残念ながら、美容目的とされることが多い薄毛治療費は、医療費控除の対象とならないのが一般的です。医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額(原則として10万円)を超えた場合に、その超えた金額に応じて所得税や住民税の還付・軽減が受けられる制度です。この制度の対象となる「医療費」とは、「医師または歯科医師による診療または治療の対価」や「治療または療養に必要な医薬品の購入の対価」など、病気の治療を目的としたものとされています。一方、AGA治療や美容目的の育毛治療は、生命に直接関わる病気の治療とはみなされにくく、「容姿を美化するための費用」あるいは「QOL(生活の質)を向上させるための費用」といった位置づけになるため、原則として医療費控除の対象外となります。例えば、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといったAGA治療薬の購入費用や、クリニックでの診察料、注入治療、自毛植毛手術の費用などは、医療費控除の対象にはなりません。ただし、例外的なケースも考えられます。例えば、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、明確な「病気」として診断され、その治療のために皮膚科で処方された薬剤の費用や診察料は、医療費控除の対象となる可能性があります。また、他の疾患の治療の一環として薄毛治療が行われた場合や、医師が治療の必要性を強く認めた特殊なケースなどでは、個別の判断で医療費控除が認められる可能性もゼロではありません。しかし、これは非常に稀なケースであり、基本的にはAGA治療費は控除対象外と考えておくのが無難です。もし、ご自身の薄毛治療費が医療費控除の対象になるかどうか判断に迷う場合は、管轄の税務署や税理士に相談してみることをお勧めします。専門家が、個別の状況に応じて的確なアドバイスをしてくれるでしょう。