薄毛の原因は、体質やホルモン、頭皮環境だけでなく、日々の何気ない習慣に潜んでいることもあります。その代表例が「牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)」です。これは、髪の毛が長時間にわたって物理的に強く引っ張られ続けることで、毛根に負担がかかり、その部分の髪が抜けたり、生えてこなくなったりする脱毛症です。他の脱毛症と異なり、原因が非常に明確であるのが特徴です。最も分かりやすい原因は、毎日のヘアスタイルです。例えば、いつも同じ位置で髪をきつく結ぶポニーテールやお団子ヘア。バレリーナや客室乗務員、看護師といった、仕事柄きっちりとしたまとめ髪が求められる職業の女性に多く見られます。また、編み込み(コーンロウやブレイズ)、髪を引っ張りながら結う日本髪、そして重さのあるヘアエクステンションなども、特定の毛根に持続的な負担をかけるため、牽引性脱毛症を引き起こす原因となります。常に同じ分け目を続けていると、その分け目部分の頭皮が露出し、髪の重みで引っ張られることで、分け目が徐々に広がっていくこともあります。このタイプの脱毛症は、生え際や分け目、結び目の周辺といった、力がかかりやすい部分に集中して起こるのが特徴です。初期段階では、髪を結ぶと頭皮に痛みを感じたり、毛穴の周りが赤くなったりといったサインが見られます。これを放置して同じ習慣を続けると、毛根組織がダメージを受け、髪の毛が細くなり、最終的にはその部分から髪が生えてこなくなる可能性もあるため、注意が必要です。牽引性脱毛症の最大の予防策であり、治療法は、原因となっている「牽引」をやめることです。つまり、髪を引っ張る習慣を改めることに尽きます。毎日同じ髪型をするのをやめ、ポニーテールの位置を変えたり、ゆるめのお団子にしたり、ダウンスタイルで過ごす日を作ったりするだけで、毛根への負担は大幅に軽減されます。分け目も定期的に変えることを意識しましょう。ヘアエクステンションをつけている場合は、長期間つけっぱなしにせず、定期的に休ませる期間を設けることが重要です。幸い、牽引性脱毛症は早期であれば、原因を取り除くことで毛根の機能が回復し、再び髪が生えてくる可能性が高い脱毛症です。心当たりのある方は、今日からでもヘアスタイルを見直し、大切な髪と頭皮を物理的なストレスから解放してあげましょう。
いつも同じ髪型は危険?牽引性脱毛症の真実